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劇の途中〜パコの死

 投稿者:154cm  投稿日:2008年 5月27日(火)23時18分7秒
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  パコ・大貫・室町が上手から走って来る。
パコ  負けるな、ガマ王子!
大貫  あぁー!
室町  そいやぁー!
大貫  うわぁ!…あ…

大貫、倒れる。

室町  小癪なガマ王子…お前のような奴は、このハサミで真っ二つにしてくれるわ。
大貫  ごめんよみんな…ごめんよみんな…。バカで間抜けで意地悪な、そんなそんな僕だけど、何か皆にしてあげたくて、こうしてここまでやって来た。だけど強いよ、ザリガニ魔人。ぼくはそろそろ死んじゃうよ…。(立ち上がりながら)けれども何度も立ち上がる!不思議な力がそうさせる。僕の心の片隅に、急に生まれたこの気持ち。ごめんよみんな…ごめんよみんな……うっ

     大貫が倒れる。

光岡  あっ!
パコ  どうしたの?
浅野  大貫さん、大貫さん。光岡君、ストレッチャー。
大貫  いやいや、大丈夫。最後までやらせてくれ。
浅野  喋らないで。
大貫  へっへっへ…どうせ死ぬシーンだし。
パコ  大貫?ねぇどうしたの?
大貫  大丈夫だよ、パコ。ほら、もうすぐお話が終わる。 …皆頼むよ!頼むよ、ほんと。ただの発作だから。
室町  (間を空けて)うぐぁぁ!何だこれは。カエルの毒か!

     他の皆もサッと役に戻る。
     浩一は上手に行き、じょうろを持って来る。

室町  うわぁ!突然体が痺れてきた!何と…お前にまだ…そんな力が残っていたとは…。

     室町が倒れる。
     浩一が、ベンチの上からじょうろで水を降らす。(タライに向かって)
     皆浩一を見る。
大貫  浩一!
浩一  ごめんおじさん、これしか無かったんだ。
大貫  情けない。(ニッと笑ってから光岡に向かって)おい、あんた。最後を読んでやってくれ。
光岡  けど、じっちゃん!
大貫  最後まで読んであげなきゃ。明日じゃダメなんだ。
室町  俺がやる。

     室町、ベンチに触覚と手袋を捨て、絵本を手に取る。

室町  ガマ王子の死んだあと、雨がいっぱい降りました。お空の皆が泣いているのか、雨がいっぱい降りました。カエルがとっても大好きな、雨がいっぱい降りました。

     室町が絵本を読んでいる途中から、雨が降り始める。

パコ  雨だ!
木之元 あら、ねぇこれ外?
光岡  えっ?

     皆、次々と外を見に行く。

雅美  あ、何これすごい雨!
光岡  いや…雨じゃない!
龍門寺 庭に誰かおる!

     下手から、車椅子に乗った滝田が消火器を持って現れる。

浩一  滝田さんだ!
木之元 ほんとだ!
龍門寺 えぇぞ、消防士!
パコ  降れ〜!もっと降れ〜!

     滝田が皆に向かって敬礼し、皆も敬礼する。

室町  ガマ王子の死んだ後、二つの石の隙間から、可愛い可愛い黄色いお花が、今年もそっと咲きました。大きな大きなお池に咲いた、小さな小さな黄色いお花。大きな大きなお池で起こった…小さな小さなカエルの…お話。
     大貫は室町を見ながら、嬉しそうに笑っている。

大貫  パコ。
パコ  何?
大貫  お誕生日、おめでとう。

     パコも嬉しそうに笑う。
     大貫の顔から表情が消え、静かに意識を失っていく…。
     音楽が次第に大きくなっていき、暗転。

     場面転換して、現代に戻る。
     堀米の前には、コーラの空き缶が更に増えている。

浩二  お話、聞けて良かったです。最後まで。
堀米  最後?
浩二  あれっ。その、大貫さんは…亡くなったんですよね?
堀米  とんでもない。ほんとに、ただの発作だったんです。その日の晩には回復しました。
浩二  えっ、けど…
堀米  死んでほしかったですか?
浩二  そんな事はないですけど…でもその方が、何か感動的じゃないですか。
堀米  ほぉ。…じゃぁ死にました。パコちゃんに見守られながらね。で、彼の全財産をパコちゃんに譲り、そのおかげでパコちゃんの病気は治りました。
浩二  話違うじゃないですか。嘘やめて下さいよ。
堀米  けど…真実があなたのお気に召しますかどうか。
浩二  真実に…気に入るも気に入らないもないですよ。
堀米  (間をおいて)ほぉ。良い言葉だ。とっても良い言葉だ。
浩二  あっ、まぁあの、勢いで出ちゃった言葉ですけど。
堀米  分かりました。真実の最後をお話し致しましょう。あなたが気に入ろうが、気に入るまいがね。(途中から心拍音が鳴り始める)

     暗転。
     場面転換して、舞台は再び病院の中へ。
     パコの病室に大貫・雅美・龍門寺以外が集まっている。
     大貫がドアを叩く。
大貫  (部屋に入りながら)何だ?まだ寝てるのか?パコは。ずぅっと待ってたんだぞ。

     大貫が病室に入って来る。

大貫  よぉよぉよぉ、お揃いじゃないか。今日は皆で遊んであげるのか?

     大貫、異変に気づく。

大貫  何だよ。パコに何してる。
浅野  大貫さん。
大貫  パコを出してやってくれよ。絵本を読んであげなきゃいけないんだよ。
木之元 お別れだよ…さよならって、言ってあげな。
大貫  …あんた、医者だろ?何とかしろよ。医者なら何とかしろよ。
浅野  パコちゃんね、いっぱい頑張ったんですよ。あなたと、あの本を読むようになってから…普通の子供のように元気になった。けどね、大貫さん。パコちゃんね。本当は、あなたと会うことすら出来なかったはずの子なんです。
大貫  待て。待て待て待て。これ、何かの冗談だろ。私を騙してるんだ。私は皆にひどいことをした、その仕返しだろ。ハハハハ…降参だ。けどこりゃぁあんまりな冗談だぞ?冗談ってのはなぁ、笑えなけりゃぁ!どけろよ、この囲いどけてくれよ。ほっぺたに触ってやらないと。この子は私が誰だかわからないんだよ!なぁどけろよ。ほっぺたに触ってやんないと!どけろったら。どけろこんなもん!

     無理やりどけようとする大貫を、室町と光岡が抑える。

大貫  放せ!放せ!
光岡  じっちゃん!
大貫  うるせー!私はこの子の心の中にいたいんだよ、なぁ。私はこの子の心の中にいたいんだよ、先生!
浅野  大貫さん、静かに…逝かせてあげて下さい。
大貫  頼むよぉ。ほっぺたに触ってやるだけで良いんだよ。頼むよぉ。

     ピーっという音が鳴り響き、パコの心臓が止まる。
     木之元が泣く。
     大貫が囲いにもたれて泣く。

光岡  (ゆっくりと大貫に近づきながら)じっちゃん…
大貫  これはなぁ、この本はなぁ。この子と一緒に読む本だ。(絵本を破りながら)いらん。こんな本はいらん。

     大貫、絵本を放り投げ、(間をおいて)パコのもとへ歩み寄る。

大貫  パコー。最後の誕生日だね、おめでとう。
 

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